「心はどこにあるのか?」、「心とは何か?」、「人はどうしてその思考や行動をするのか?」、「ある問題があってそれを解決するにはどうすればよいのか?」など、ずっと昔から哲学者や医師たちが「心」に関するたくさんの疑問について探求してきました。
心理学という学問が誕生してからは、心理学者も研究を行うようになり、新しい発見がいくつもありました。
今回は、たくさんある心理学の分野がどのような流れで生まれたのか、「心理学の変遷」について、一緒に時間の旅をしてみましょう!
心理学の変遷

ギリシャ哲学
心理学の歴史は、古代ギリシアの時代まで遡ります
ギリシャ哲学の学者は、ソクラテス、プラトン、アリストテレスなど、一度は聞いたことがあるような有名な人たちです。
ソクラテスが実践していた「ソクラテス式問答法」は、問いかけをして答えてもらうという対話を行います。
そうすることによって、自分は何も知らないのだということを理解させて、無知を自覚することや考え方が矛盾していることに気づかせるという手法です。アドラー心理学や認知療法につながったと言われています。
プラトンは、人の魂(心)は理性、気概、欲望で構成されているという「魂の三分説」を唱えました。
プラトンの弟子で「万学の祖」と呼ばれるアリストテレスは、霊魂(心)の働きとして、五感や共通感覚(形、大きさ、数などの感覚)、記憶や思考などがあると考え、人は高度な「理性」を持っているとしました。
近世哲学
近世哲学は、「大陸合理主義」と「イギリス経験論」の立場に分けることができます。
大陸合理主義の考え方をする哲学者はルネ・デカルトで、知識は生まれながらに備わっている生得観念や理性に由来するものであるため、経験で身につくものではないと主張しました。
イギリス経験論の哲学者はジョン・ロックで、知識は感覚や経験から作られるという考え方で、心は生まれたときには何も書かれていない白紙(タブラ・ラサ)であり、すべての観念は経験から形成されると主張しました。
生理学

生理学とは、生体の機能とメカニズムを研究対象にしている学問です。
「パブロフの犬」の実験で有名なイワン・パブロフは、実験を行って古典的条件づけを提唱しました。
パブロフは心理学者ではなく生理学者ですが、古典的条件づけの「条件反射」は行動主義心理学の基礎となりました。
19世紀になると、精神物理学(生理学者ウェーバー、物理学者フェヒナー)や、神経生理学(医師のブローカやウェルニッケ)も発展していきました。
実験心理学

1879年にヴントがドイツのライプツィヒ大学に心理学実験室を開設したことによって、科学的に「心」を研究する心理学という学問が誕生しました。
ヴントは、心理学の研究に実験を取り入れて、客観的なデータによって「心 / 意識」を科学的に解明しよう(実験心理学)としました。
ヴントは「意識」を心理学の研究の対象として、意識は「表象(イメージ)」「意志」「感情」の3つに分類できると考えました。
このように、意識は細かい要素に分解できるというヴントの考えを「要素主義(構成主義)」と言います。
心理学の3大潮流

心理学の3大潮流とは、ジークムント・フロイトの精神分析、ウェルトハイマーのゲシュタルト心理学、ジョン・ワトソンの行動主義心理学のことです。
ヴントが「意識」を研究対象としていること、「意識を要素に分解できる」と主張したこと、「内観法」という研究方法を用いたことが、ほかの心理学者からの批判を浴びることになりました。
精神分析は「無意識」も研究する必要があると主張、ゲシュタルト心理学は複雑な意識現象も単純な要素に分解できるという「要素主義」の考え方を批判、行動主義心理学は「行動」を研究対象にするべきだとして、この3大潮流はヴントの心理学を批判しました。
ワトソンの行動主義心理学は、1930年代になると新行動主義として、新しい研究者が登場しました。
多くの心理学の分野が誕生

心理学にはたくさんの研究分野があるので、すべてを紹介することができませんが、いくつかの心理学がどのように誕生したのか見ていきましょう!
発達心理学
発達心理学は、19世紀末のプライヤー、スタンレー・ホールが先駆けとなって、「児童心理学」として誕生しました。
プライヤーの著書『児童の精神』(1881)は、児童心理学の始まりを告げる著だとして評価されています。
ホールは、児童研究運動の指導者として知られています。
臨床心理学
アメリカの心理学者ウィトマーが、1896年に母校のペンシルベニア大学に、世界初となる心理学的クリニックを開設しました。
この心理学的クリニックは、医師、ソーシャルワーカー、教師、心理学者が関わっていて、大学院生の訓練システムも整えられていたそうです。
ウィトマーもヴントのもとで実験心理学を学んで、博士号を取得しています。
1907年には、『心理学的クリニック』という学術雑誌を創刊しています。
創刊号の冒頭には「臨床心理学」という論文を掲載していて、これが臨床心理学という用語の始まりでした。
ウィトマーは、説教をしているようで哲学的な従来の医学から抜け出す方法が「臨床」であるとして、彼自身が目指す実践的な心理学を臨床心理学と呼びました。
社会心理学
社会心理学が誕生したのは、1908年だとされています。
アメリカではロスが『社会心理学』を、イギリスではマクドゥーガルが『社会心理学入門』を出版したため、この年は心理学の起源となる年と言われています。
人間性心理学
1960年代からは、人間性心理学が台頭してきました。
欲求の階層説を提唱したマズローは、自分たちを第3勢力だと言って、「第1勢力の行動主義」と「第2勢力の精神分析」と対抗できると考えました。
人間性心理学の学者として有名なのは、来談者中心療法で知られるカール・ロジャーズです。
認知心理学
認知心理学という言葉は、1967年にウルリック・ナイサーの著書『認知心理学』にによって、広く知られるようになりました。
ナイサーは、認知心理学の基礎となるゲシュタルト心理学の創設者の一人であるヴェルトハイマーの助手であったケーラーのもとで学んでいた心理学者です。
ワトソンの行動主義心理学では、単純な行動の説明はできますが、複雑な行動を説明することが難しく、S-R理論では限界がありました。
認知心理学が誕生した1960年代には、コンピューターの開発が進んでいて、記憶、思考、学習なども情報処理システムに当てはめて説明することができるようになりました。
ポジティブ心理学
ポジティブ心理学は、1998年にマーティン・セリグマンによって創設されました。
それまでの心理学は「心の病気やネガティブな状態の治療や回復」に焦点が当てられることが多くありましたが、ポジティブ心理学は人がもともと持っている「強み」や「幸福感」「成長」「ウェルビーイング」を科学的に研究しています。
ポジティブ心理学は、マイナスをゼロにするのではなく、その人が持っているプラスの面に着目して、それを伸ばすためにアプローチする学問と言えるでしょう。
まとめ
心理学の歴史の旅…、少し長くなってしまいましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました
心理学の分野は、もっともっとたくさんあるので、今回は一部でありますが心理学の歴史に少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。
次回は、「3大勢力」についてもっと詳しく紹介したいと思います!
