ゲゼルの「成熟優位説」vsワトソンの「環境優位説」

成熟優位説 環境優位説 発達心理学

人の発達に影響を与えるのは、両親から受け継いだ遺伝的な情報でしょうか、それとも育った環境でしょうか?

20世紀の前半には、心理学者たちも発達に大きく影響する要因は「生まれ(遺伝)vs 育ち(環境)」という論争を繰り広げていました。

今回は、環境よりも遺伝であると主張したゲゼルと、遺伝より環境であると主張したジョン・ワトソンの説について紹介したいと思います。

「遺伝説」vs「環境説」

古代から続く遺伝か環境かの議論

成熟優位説 環境優位説 発達心理学

人の性格や能力は「生まれつき備わったものなのか?」、それとも「育った環境によるものなのか?」という議論は、古代ギリシアの哲学者たちも行っていたようです。

17~18世紀には、ルネ・デカルトは「生得説」、ジョン・ロックは「経験説」という真逆の思想のもと、哲学者は自分の考え方を主張していました。

20世紀に突入すると、心理学者も「遺伝」か「環境」という議論をするようになりました。

19世紀~20世紀の前半は、遺伝によって性格が決まるという説が支持されていましたが、次第に環境によって性格が決まるという「環境説」が支持されるようになっていきました。

 「生得説」と「経験説」はこちらの記事をご覧ください!

ゲゼルの成熟優位説

成熟優位説 ゲゼル 発達心理学

成熟優位説は、アメリカの心理学者・小児科医アーノルド・ゲゼルが提唱したもので、発達は環境的な要因ではなく、遺伝などの内的な要因によって特性や能力が自然に出現すると考える説です。

ゲゼルは、1927年に一卵性双生児の女の子(CちゃんとTちゃん)を対象に階段上りの実験を行いました。

Tちゃんは生後46週から6週間毎日階段上りの練習をしました。Cちゃんは、生後53週から2週間の練習を行いました。その結果、練習期間の短いCちゃんの方が、速く上手に階段を上ることができました。さらに、ある一定の月齢になるころには、2人とも同程度の階段上りができるようになっていました。

この実験からゲゼルは、訓練や学習を早期から行ったとしても、結果として大きな効果を得ることはできないと考えました。

そして、人が本来持っている能力を発揮するためには、心身が一定の発達水準に達している必要があるとして、レディネス(心身の準備が整った状態)の重要性を主張しました。

ワトソンの環境優位説

環境優位説 ジョン・ワトソン 発達心理学

ワトソンは、アルバート坊やの「恐怖条件づけ」で有名な心理学者で、遺伝よりも環境が発達に影響を与えるという環境優位説を主張しました。

アルバート坊やの実験では、最初はねずみを怖がらなかったアルバート坊やが、ねずみを触ろうとしたときに大きな音が出されるということを繰り返されたことで、ねずみを見ただけで怖がるようになりました。

この実験の結果から、遺伝よりも経験や学習などの「環境」が重要であると結論づけました。

ワトソンは、行動は「刺激と反応」が組み合わさっているだけだとする「S-R理論」を提唱し、これを応用して教育をすればどのような能力を持った子どもにも育てられると考えました。

 ワトソンの恐怖条件づけはこちらをご覧ください!

まとめ

日本では江戸時代(1707年頃)に、「氏より育ち」ということわざが誕生して、家柄や血筋よりも育った環境や教育が人格の形成に影響を与えるという価値観が、一般の人たちに広まっていったようです。

現在は、「遺伝と環境は、どちらも発達に影響を与えているため同じくらい重要である」と言う考え方が支持されています。

次回は、遺伝と環境は足し算であるというシュテルンの輻輳説と、遺伝と環境は相互に作用しているとするジェンセンの環境閾値説を紹介します!

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