怒りや喜びなどの感情を経験するためには、心臓がドキドキするなどの身体の反応と、それが起こる原因をどのように捉えて解釈するのかという2つの条件が揃っている必要があると考えた心理学者たちがいました。
喜怒哀楽を感じるためには、何が必要なのでしょうか…?
今回は、情動の二要因説とその実験、関連する理論について一緒に学んでいきましょう!
情動の二要因説とは
情動の二要因説
情動の二要因説は、感情がどのように起こるのかというメカニズムに関する理論です。
アメリカの心理学者スタンリー・シャクターと、ジェローム・シンガーという二人の心理学者によって提唱されました。
感情が生起するためには、外部からの刺激によって、交感神経系が活性化する生理的覚醒(心拍数や血圧の上昇、身体が緊張状態になるなど)の状態であること、そして生理的覚醒の原因を解釈すること(ラベルづけ / 認知的評価)の二つの要因が必要であるとする説です。

情動の二要因説は、シャクターとシンガーの共著論文として発表されたため、「シャクター=シンガー説」と呼ばれることもあります。
また「情動二要因説」や「認知覚醒理論」と呼ばれることもあります。
情動の二要因説の実験
シャクターとシンガーは、情動の二要因説を証明するために、1962年に実験を行いました。
実験はⅠ~Ⅲ群の3つのグループに分けて行われました。
実験参加者は、ビタミン剤の視力向上効果の検証のためという嘘の説明を受けて実験に参加しました。
実験の内容

Ⅰ群は、実験参加者にはビタミン剤であるという偽の情報を伝えて、アドレナリンを注射して強制的に生理的覚醒の状態にしました。
Ⅱ群は、何の情報も伝えずに、生理食塩水を注射しました。
Ⅲ群は、アドレナリンが交感神経を高めて、心拍数を増加させるなどの生理的覚醒を促す効果があるという正しい説明を受けました。
アドレナリンを注射された被験者は、陽気に振る舞う実験協力者(さくら)もしくは、怒りをあらわにしている実験協力者(さくら)と一緒に待合室で待たされました。
実験の結果

Ⅰ群は、アドレナリンの作用によって生理的覚醒の状態になっていましたが、自分がなぜ興奮しているのか理解できず、怒りをあらわにしている実験協力者と一緒にいるから、自分も怒りを感じたのだと考えました。
Ⅱ群は、生理食塩水には興奮させるような作用はないため、情動は起こりませんでした。
Ⅲ群は、Ⅰ群と同じくアドレナリンを注射されているので、ドキドキするような興奮状態になりました。しかし、自分が興奮しているのは、アドレナリンを注射されたことによるものだと適切に帰属をすることができたため、怒りなどの情動は起こりませんでした。
原因帰属についてはこちらをご覧ください!
アドレナリンの作用を説明されなかった実験参加者の結果

アドレナリンの作用を説明されなかった実験参加者は、実験協力者が表出したものと同じような情動を経験したと報告しました。
実験協力者が怒っているとき参加者は怒りを感じ、陽気に振る舞っているときは参加者は楽しい気分になったようです。
Ⅰ群の実験参加者は、自分が感じている生理的覚醒の原因を、身近にいた他者の情動に影響を受けたのだと認知的評価したことで、怒りや楽しさなどの情動を感じたことがわかりました。
生理的覚醒が起こっていないため情動が生じなかったⅡ群と、生理的覚醒は起こっていてもアドレナリンの作用であると認知的評価をしたため情動が生じなかったⅢ群。
この結果から、生理的覚醒と認知的評価のどちらかだけでは情動が生じることはなく、2つの要因が揃う必要があると結論づけられました。
情動の二要因説は、80年ほど前に提唱された抹消起源説と中枢起源説をうまく折衷した理論と言われています。
抹消起源説と中枢起源説についてはこちらをご覧ください!
ほかの理論との関連性

情動の二要因説は、帰属理論との関連性があります。
ロミオとジュリエット効果や吊り橋効果についても、情動の二要因説で説明をすることができます。
ロミオとジュリエット効果は、親から反対されるなどの障壁があるほど、恋愛感情が高まるとされる心理現象のことです。
親に反対されたときに生じるイライラや動悸による興奮(生理的覚醒の原因)を、相手に対する強い愛情であると認知的評価したことで、情動が生じていると考えることができます。
吊り橋効果は、吊り橋の高さに驚いて興奮している(生理的覚醒の原因)のに、相手が好きだからドキドキしていると考えている(認知的評価)ため、情動の二要因説に当てはめることができます。
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