人は本当に起こっていない出来事を、実際に起こった出来事なのだと誤って記憶してしまうことがあります。
家族や友人と過去の話をしているときに、「そんなことしてない」、「そんなこと言っていない」というように、相手の記憶と自分の記憶が全く噛み合わなかった経験があるかもしれません。
今回は、虚偽記憶と実験、記憶の変容とはどのように違うのかについて一緒に学んでいきましょう!
虚偽記憶とは?
虚偽記憶の実験
実際には起こっていないことを事実として記憶してしまうことを、虚偽記憶または過誤記憶と言います。
アメリカの心理学者エリザベス・ロフタスは、冤罪になった事件の多くが、目撃者の誤った記憶が原因で発生していることに注目して、虚偽記憶に関するいくつかの実験を行っています。

ロフタスは、「質問の仕方」で事故を目撃者した人の証言が変わることを実験で証明しました。
この実験では、まず自動車の衝突事故の映像を被験者全員に見せました。
そして、AとBのグループに分けて、質問の仕方を変えて被験者がどのように答えるのかを調べました。
Aグループ

Aグループには、「2台の車は時速何キロくらいでぶつかりましたか?」と聞きました。
被験者は「50キロくらい」と答えました。
続いて、「ガラスは割れていましたか?」と実験者が聞きました。
被験者は、「ガラスは割れていなかった」という正しい情報を答えました。
Aグループは、事故の様子を正確に答えることができたため、虚偽記憶は形成されていません。
Bグループ

Bグループには、「2台の車は時速何キロくらいで激突ましたか?」と聞きました。
被験者は「65キロくらい」と答えました。
続いて、「ガラスは割れていましたか?」と実験者が聞きました。
被験者は、「ガラスは割れていました」という誤った情報を答えました。
Bグループは、実際の事故よりも速い速度を回答して、割れなていなかったガラスを割れていたと答えました。
これは、実際には起こっていないことが、事実として被験者が記憶したことになります(虚偽記憶が形成された)。
AグループとBグループの被験者は、どちらも同じ映像を見ています。
しかし、「激突」という言葉によって、事故の様子の記憶が変わってしまいました。
事後情報効果
ロフタスの実験のように、事後の情報によって記憶が変わってしまうことを事後情報効果と言います。
アメリカでは、冤罪事件のうち約75%の裁判で、事実とは異なる目撃証言があり、それが有罪の根拠となったと報告されたことがあるようです。
長期記憶はすべてが事実であるわけではなく、そのあとの経験や感情、誘導尋問などによって書き換わってしまい、虚偽記憶が形成される可能性があります。
記憶の変容との違い

虚偽記憶は、実際には起こっていないことが、本当に起こった出来事、事実であると誤った記憶をしてしまうことです。
記憶の変容とは、実際に起こった出来事の内容が変化したり、一部分が不正確になることです。
記憶の変容は、虚偽記憶よりも包括的な概念であると言えます。
強い感情を伴う重大な出来事に関して、そのときの状況をとても鮮明に思い出すことができるフラッシュバルブ記憶というものがあります。
フラッシュバルブ記憶の特徴は、当時の状況を鮮明に覚えていて、それが正しい記憶であると信じていることです。
実際に起こった出来事は存在していますが、その覚えている内容が必ずしも正しいものではないという実験結果も出ています。
フラッシュバルブ記憶のように、出来事は実際にはあったけれども、その一部分が変わってしまっている場合は、虚偽記憶ではなく、記憶の変容が起こったと言えるでしょう。
フラッシュバルブについてはこちらをご覧ください!
まとめ
ロフタスは、はじめは言語学習の分野を研究していましたが、情報の違いによって誤った記憶の想起(覚えたことを思い出すこと)が起こることに注目しました。
彼女は目撃証言に関する研究を多く行って、『目撃者の証言』という本も執筆しました。
もともと言語を研究していたため、「質問の仕方」で目撃の証言が変わってしまうという面白い着眼点で研究が行えたのかもしれませんね。
次回は、虚偽記憶を植え付ける実験「ショッピングモールの迷子」を紹介したいと思います!
